奇遇にばったり、あのときのあいつ

就職活動のセミナーに何度か参加していると、以前どこかのセミナーで見かけた他大学の人を再び見かけることがある。


俺はそういう人のことを「あ、あいつあのときの！」
と総称することにしている。


あるセミナー会場で、部屋に入る際に「前の方からつめてお座りください」って言われたのにもかかわらず一番後ろしか空いてなくて一番後ろに座っていると、俺の右斜め前に「あ、あいつあのときの！」がいた。


「あ、あいつあのときの！」は俺に気づいていないようだ。

「あ、あいつあのときの！」は以前のセミナーで同じグループになったことがあるので、俺の存在を知らないはずはない。

まあ後ろに俺がいるんやから気づかなくても仕方ないだろう。


セミナー中にキョロキョロする「あ、あいつあのときの！」のしぐさはまさに「あのとき」の再現である。


誰かが質問するときに、その人の方をめっちゃ凝視するうっとうしさも「あのとき」さながらだ。


セミナー終了後、「あ、あいつあのときの！」は「あのとき」同様、俺より先にアンケートに書き終え、先に会場をあとにした。


「あのとき」、「あ、あいつあのときの！」は会場のビルを出るや否やものっすごい勢いでタバコを吸いまくっていた。


「もしかしたらまたビルの前で吸うとるかもしれへんなぁ」

と思いつつ俺はビルから出たが、そこに「あ、あいつあのときの！」の姿はなかった。


「まだそう遠くには行ってないはずだ！」

などと思うわけもなく、俺は家路を急いだ。